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理系受験生の「共通テスト後の形式切替」―マーク式から記述式、数IA・IIBから数III中心へ

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理系受験生が直面する「共通テスト後の形式切替」という構造的課題――マーク式から記述式、数IA・IIBから数III中心へ

共通テスト終了後、理系受験生は他の受験生とは異なる独特の困難に直面する。文系受験生が主に「科目間の優先順位調整」に悩むのに対し、理系は試験形式そのものの切替出題範囲の重心移動という二重の課題を抱える。しかも私立理系一般入試は共通テスト直後から開始されるため、この切替を実行する時間的余裕はほとんど存在しない。


目次

  1. モード切替の問題――マーク式から記述式、数IA・IIBから数III中心へ
  2. 理系特有の「立て直し」観点――3つの構造的課題
  3. 共通テスト後に見られる典型的失敗パターン
  4. 一般的に報告される"切替の傾向"
  5. まとめ

1. モード切替の問題――マーク式から記述式、数IA・IIBから数III中心へ

共通テスト特有の出題形式と能力負荷

共通テストの数学・理科は誘導形式マーク方式を特徴とする。数学では小問が連鎖的に配置され、前の設問の結果を次の計算に利用する構造が多い。この形式では、速読力(問題文の迅速な読解)、選択肢の吟味(逆算や代入による検証)、時間配分の最適化(捨て問の判断を含む)が重視される。

理科も同様で、物理・化学では計算結果を選択肢から選ぶ形式が中心となり、途中過程の厳密な記述よりも最終的な数値の正確性が評価される。生物では知識の再生と資料読解が問われ、論述力はほとんど求められない。

私立一般入試で求められる出題形式の違い

一方、私立理系一般入試では記述式が主流である。数学では途中式を含めた解答過程の記述が求められ、部分点の獲得が合否を分ける。物理・化学では単なる数値計算だけでなく、現象の理解を示す論述グラフの作図実験考察の記述が頻出する。

さらに重要なのは、数IIIの比重が圧倒的に高まる点である。共通テストでは数IA・IIBが中心であり、数IIIは出題されない。しかし私立理系(特に工学部・理学部)では、微分・積分・複素数平面・極限といった数III領域が全体の50〜70%を占めることが珍しくない。

この結果、受験生は認知的・技能的ギャップに直面する。マーク式に最適化された思考回路(速度重視・選択肢依存)から、記述式に必要な思考回路(論理展開・計算の丁寧さ)へ切り替える必要がある。同時に、共通テスト対策で一時的に離れていた数III領域の感覚を短期間で回復させなければならない。


2. 理系特有の「立て直し」観点――3つの構造的課題

注意点①:数IIIの計算力回復に伴う認知的課題

共通テスト直前期、多くの受験生は数IA・IIBの演習に時間を割き、数IIIの演習量が相対的に減少する。この期間、微分計算の速度、積分の工夫、極限の評価といった技能は自動化のレベルが低下する。

共通テスト後、私立一般の過去問に取り組むと、この低下が顕在化する。例えば、極限の計算でロピタルの定理の適用判断が鈍る、定積分の計算で部分積分や置換積分の選択に迷う、複素数平面の問題で極形式への変換がスムーズにできない、といった現象が報告されている。

これは単なる「忘却」ではなく、短期間の集中により特定領域のみが強化され、他領域が相対的に抑制されることも要因。数IIIの計算力回復には、単純な反復演習だけでなく、手続き記憶の再活性化という時間のかかるプロセスが必要となる。

注意点②:理科の深掘り――表層知識から深層的思考への転換

共通テストの理科は、知識の再生基本的な計算処理が中心である。物理では公式の適用、化学では反応式の暗記と計算、生物では用語の正確な理解が問われる。これらは「表層的知識」の範疇に属する。

しかし私立一般入試では、現象の本質的理解が求められる。物理では、単に運動方程式を立てるだけでなく、力のつり合いの物理的意味エネルギー保存則の適用条件を説明する論述が出題される。化学では、平衡移動の理由をルシャトリエの原理に基づいて記述する問題や、電子配置と周期律の関連を論じる問題が頻出する。

この転換は、単に「難易度が上がる」というだけでなく、思考の質的変化を要求する。暗記した公式を機械的に適用する段階から、現象モデルを頭の中で構築し、それを言語化する段階への移行が必要となる。この移行には時間がかかり、共通テスト後の数日間では完了しないことが多い。

注意点③:出願判断と評価軸の変化認知

共通テストの結果は、共通テスト利用入試のボーダーと照らし合わせる。しかし、共通テストで高得点を取った受験生が、必ずしも一般入試でも高得点を取れるとは限らない。前述の通り、評価される能力の種類が異なるからである。

逆に、共通テストで失敗した受験生が、記述式の一般入試では高得点を取るケースもある。数IIIが得意で記述力がある受験生は、共通テストの誘導形式や時間制約に苦しんでも、一般入試では本領を発揮できる可能性がある。

この評価軸の変化を正しく認識していない場合、共通テストの結果に過度に依存した出願判断を行い、本来合格可能な大学を受験しない、あるいは実力以上の大学に無謀な出願をするといった戦術的ミスが生じる。

出願のタイミングも問題となる。多くの私立大学は共通テスト前に出願締切を設定しているが、一部の大学は共通テスト後も出願を受け付ける。しかし共通テスト後の出願は日程的余裕がほとんどなく、冷静な判断が困難である。


3. 共通テスト後に見られる典型的失敗パターン

メンタル面の現象――「共テ燃え尽き」による学習継続の停滞

共通テストに向けて高い集中力を維持してきた受験生の中には、試験終了後に一時的な脱力感を経験する者が少なくない。これは「共テ燃え尽き」とも呼ばれる現象で、目標達成後の心理的な反動として知られている。

この脱力感が数日間続くと、私立一般の初戦までの準備時間が大幅に削られる。特に、共通テストで目標点に達しなかった場合、失望感が加わり、学習再開がさらに遅れるケースが報告されている。

理系受験生の場合、この停滞期間中に数IIIの感覚が一層鈍るという悪循環が生じる。共通テスト前に既に低下していた数IIIの計算力が、さらに数日間のブランクを経て回復困難な水準に達することがある。

形式切替の失調――記述式の要求水準への適応不全

マーク式に最適化された思考パターンは、短期間では修正が難しい。典型的な失調例として、以下のような現象が観察されている。

  • 途中式の省略癖:マーク式では最終答えのみが評価されるため、計算過程を丁寧に書く習慣が失われる。記述式で途中式を求められた際、どこまで書くべきか判断できず、減点される。
  • 逆算・代入による検証への依存:マーク式では選択肢を代入して正解を探す手法が有効だが、記述式ではこの方法は使えない。正攻法での解法構築が求められるが、その思考回路が鈍っている。
  • 時間感覚のズレ:共通テストは速度勝負だが、私立一般は正確性勝負である。共通テストの時間感覚を引きずると、焦って計算ミスを連発する。

これらの失調は、単に「練習不足」というより、短期間に異なる評価基準へ適応する認知的負荷の問題として理解すべきである。

戦術的ミスマッチ――共通テスト結果への過度の依存

共通テストで予想外の高得点を取った受験生が、一般入試の準備を軽視するケースがある。「共通テスト利用で合格できるだろう」という楽観的見通しが、一般入試対策のモチベーションを低下させる。

しかし前述の通り、共通テストと一般入試では評価軸が異なる。共通テスト利用のボーダーは高く設定されており、予想外の不合格も珍しくない。この場合、一般入試が唯一の選択肢となるが、準備不足により本来の実力を発揮できない。

逆に、共通テストで失敗した受験生が過度に悲観的になり、一般入試の準備に集中できないケースもある。実際には一般入試で挽回可能であるにもかかわらず、心理的ダメージから立ち直れず、受験そのものを諦める事例も報告されている。

作業的・体調的問題――連戦スケジュールによる疲労蓄積

この過密スケジュールは、肉体的・精神的疲労の蓄積をもたらす。特に遠方の大学を併願する場合、移動時間・宿泊・早朝起床などが加わり、睡眠不足が慢性化する。

疲労の影響は、試験後半に顕著に現れる。計算ミスの増加、問題文の読み違い、時間配分の失敗などが生じ、本来の実力を発揮できない状況に陥る。


4. 一般的に報告される"切替の傾向"

学習の重心移動のあり方

共通テスト後、理系受験生の学習内容は数IIIと理科の記述演習へ急速にシフトする。具体的には、以下のような傾向が観察されている。

  • 数IIIの計算演習の再開:微分・積分・複素数平面の典型問題を反復し、計算の自動化を回復させる作業。
  • 理科の論述対策:物理の現象説明、化学の理論記述、生物の考察問題など、記述形式への適応訓練。
  • 過去問演習の集中:志望大学の過去問を年度別に解き、出題傾向・難易度・時間配分を体感する作業。

ただし、共通テスト後の時間的余裕は極めて限定的であり、これらすべてを十分に実行することは困難である。多くの受験生は、優先順位の判断(どの科目・分野を重視するか)に悩む。

大学ごとの問題傾向の違い

私立理系一般入試は、大学ごとに出題傾向が大きく異なる。以下は一般的に報告される傾向である。

  • 早稲田大学(理工学部):数IIIの比重が高く、特に微分・積分の応用問題が頻出。物理は力学と電磁気が中心で、計算量が多い。
  • 東京理科大学:数学は全範囲からバランスよく出題されるが、数IIIの難度が高い。化学は理論化学の計算問題が多い。
  • 明治大学(理工学部):数学は標準的な難度だが、時間に対する問題量が多く、処理速度が求められる。物理は典型問題中心。
  • 芝浦工業大学:数学は基本〜標準レベルが中心で、ケアレスミスが命取りになる。理科は知識問題の比重がやや高い。

このように、大学ごとに求められる能力の種類が異なるため、併願校選びと過去問演習の優先順位付けは重要な判断となる。

過去問の取扱いの変化

共通テスト前は、共通テスト形式の演習(過去問・予想問題・模試)が学習の中心を占める。しかし共通テスト後は、私立一般入試の過去問へ完全に切り替わる。

この切替において、以下のような実務的課題が生じる。

  • 過去問の入手・整理:複数年度分の過去問を揃え、解答用紙を準備する作業に時間がかかる。
  • 時間配分の確認:各大学の試験時間(数学120分、理科90分など)に合わせた演習が必要だが、共通テスト後の日程では十分な回数を確保できない。
  • 解答の自己採点:記述式の採点基準は曖昧であり、自己採点の精度に不安が残る。予備校の解答速報や解説を参照するが、タイミングが遅れることもある。

5. まとめ

共通テスト後の理系受験における核心的構造は、以下の3点に集約される。

  1. 「マーク式→記述式」の形式切替:速度重視から正確性重視への認知的転換が求められるが、短期間での適応は困難である。
  2. 「広範→深掘り」の内容転換:数IA・IIBから数III中心へ、表層知識から深層的思考への移行が必要だが、時間的余裕が不足している。
  3. 「短期変換の時間的制約」:私立一般入試は共通テスト直後から開始されるため、準備期間が極めて限定的であり、過密スケジュールによる疲労蓄積も生じる。

これらの構造的課題を正確に認識することが、理系受験生と保護者にとっての第一歩となる。共通テスト後は「休息期間」ではなく「形式切替期間」であるという現実を理解し、この期間に生じる典型的な失敗パターンを事前に把握しておくことが重要である。

理系受験における「共通テスト後」とは、単なる試験の連続ではなく、認知的・技能的・戦術的・体調的な多課題が同時並行で発生する期間である。自らの状況を客観視することが、合格への道筋を見出す鍵となる。


 




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