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理系受験における英語の"本当の影響力"――データと構造から見る英語の位置づけ

理系受験における英語の"本当の影響力"――データと構造から見る戦略的位置づけ

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Ⅰ.「理系は数学・理科だけ」という誤解はなぜ生まれるのか

「理系志望なんだから、英語はそこそこでいいよね」

進路面談や家庭でのやりとりで、こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。あるいは受験生自身が、心のどこかでそう考えているかもしれません。

確かに理系入試では数学・理科の配点が高く、問題の難易度も高い。合格者の多くは数学・理科で確実に得点しています。だからこそ「英語は脇役」「最悪、共通テストだけ乗り切れば」という認識が広がりやすいのです。

しかし、この認識は半分正しく、半分危険です。

実際の入試データ、合格者の得点開示、予備校の分析レポートを総合すると、英語は「主役ではないが、最も落とし穴になりやすい科目」という位置づけが浮かび上がります。特に上位層では、数学・理科の差が縮まるほど、英語の1点が合否を分ける現実があります。

本記事では、理系入試における英語の構造的役割を、大学群別・学部系統別に徹底分析します。読み終えたとき、あなたは「自分にとって英語をどこまでやるべきか」が明確に判断できるようになっているはずです。


Ⅱ.理系における英語の本質的位置づけ

理系入試における英語の特性

「主役」ではない:合否の中心は数学・理科であり、ここで崩れると挽回は困難
「差がつきにくい」が「差がつかない」ではない:上位層ほど英語の数点が決定的になる
「安定性」が最大の価値:数学・理科が難化した年、英語で安定して得点できる受験生が勝つ
「足を引っ張る科目」になりやすい:後回しにした結果、本番で大失速するケースが多発

医学部の場合

項目 医学部 理系(医学部除く)
英語の配点比率 高い(1/4〜1/3) 中程度(1/5〜1/4)
英語で差がつくか 大きく差がつく 上位層で差が出る
英語軽視のリスク 致命的 受験校ランクに依存

 

理系の中でも医学部では英語の配点が高く、英語で大きく差がつきます。一方、理系学部では配点は相対的に低いものの、「軽視すると致命傷になる」という構造は共通しています。

Ⅲ. 理系入試の構造分析:英語が「効く」メカニズム

3-1. 配点構造から見る英語の位置

理系入試の典型的な配点比率を見てみましょう。

国公立理系(二次試験)の配点例:

大学 数学 理科 英語 国語 総点 英語比率
東京大学(理科一類) 120 120 120 80 440 27%
京都大学(工学部) 250 250 150 - 650 23%
東京科学大(旧東工大) 300 300 150 - 750 20%
大阪大学(工学部) 200 200 100 - 500 20%
地方国公立 200 200 100 - 500 20%

私立理系の配点例:

大学 数学 理科 英語 総点 英語比率
早稲田理工 120 120 120 360 33%
慶應理工 150 150 150 450 33%
東京理科大 100 100 100 300 33%

このデータから読み取れる重要な事実:

  1. 国公立では英語比率20〜27%:数学・理科が中心だが、英語も無視できない比重
  2. 私立では英語比率33%:3科目均等配点であり、英語の重要度が国公立より高い
  3. 医学部を除く理系で、英語配点が1/3を超えることは稀

3-2. 数学・理科が難化したときの英語の役割

ここが最も重要なポイントです。

数学・理科が易化した年:

  • 上位層が数学・理科で満点近く取る
  • 合否は英語の数点差で決まる
  • 英語ができない受験生は不合格

数学・理科が難化した年:

  • 全体の得点が下がり、差がつきにくくなる
  • 英語で安定して得点できる受験生が合格を掴む
  • 数学・理科を捨てて英語に逃げるのではなく、英語で「保険」をかけておく戦略が有効

実際、「国公立二次試験で英語の得点率が50%を下回ると、合格率が急激に低下する」という傾向があります。

つまり英語は:

  • 差をつける科目ではなく、差をつけられない科目
  • 「勝つ」ためではなく「負けない」ためにやる

3-3. 上位層で英語が効いてくる理由

東大・京大・東工大などの最難関理系では、数学・理科の難易度が極めて高く、満点を取れる受験生はほとんどいません。

合格者でさえ数学・理科は5〜7割程度の得点率であることが多く、そこで大きな差はつきません。

結果として、英語の10〜20点差が合否を分けるのです。

東大理系の合格者得点開示データを見ると:

  • 数学:60〜80/120点(50〜67%)
  • 理科:60〜90/120点(50〜75%)
  • 英語:70〜95/120点(58〜79%)

英語は数学・理科より得点率が高く、かつ安定しています。つまり**「英語ができることが、上位層での最後の差別化要因」**になっているのです。


Ⅳ. 大学群別:英語が合否に与える影響

ここからは、具体的な大学群ごとに英語の影響度を分析します。

4-1. 最難関理系(東大・京大・東京科学大など)

英語がどの程度差を生むか:

  • 決定的に差がつく
  • 数学・理科で満点を取れる受験生はほぼいないため、英語の10〜20点が合否を分ける
  • 英語が苦手だと、数学・理科でカバーすることは極めて困難

何割取れば安全か:

  • 東大・京大:65〜75%以上(120点満点で78〜90点)
  • 東京科学大:60〜70%以上(150点満点で90〜105点)
  • 合格者平均は概ね65%前後

戦略:

  • 英語を「捨てる」選択肢はない
  • 数学・理科と並行して、高3の夏までに英語の基礎を完成させる
  • 英語で75%取れれば、数学・理科は60%でも合格圏

この層の受験生へ:
「最難関理系では、英語ができないと合格できません。数学・理科の天才でも英語で足を引っ張られれば不合格です。逆に、英語で安定して75%取れる受験生は、数学・理科が多少崩れても合格できます。」


4-2. 上位国公立理系(旧帝大・筑波・横国・神戸など)

英語がどの程度差を生むか:

  • 中程度に差がつく
  • 数学・理科の難易度が高いため、英語で稼ぐことが有効
  • 英語6割未満だと、数学・理科で7割以上必要になり負担が大きい

何割取れば安全か:

  • 60〜70%以上
  • 共通テストで8割、二次試験で6割が目安

戦略:

  • 英語は「保険」として機能させる
  • 数学・理科に注力しつつ、英語は高3の秋までに6割レベルに到達
  • 英語で7割取れれば、数学・理科は5〜6割でも合格可能

この層の受験生へ:
「上位国公立では、英語を『そこそこ』やっておくだけで、かなり楽になります。英語6割を確保できれば、数学・理科のプレッシャーが減ります。」


4-3. 地方国公立理系

英語がどの程度差を生むか:

  • 差がつきにくいが、足切りラインとして機能
  • 数学・理科の難易度が標準的なため、そちらで差がつきやすい
  • ただし英語5割未満だと合格が難しくなる

何割取れば安全か:

  • 50〜60%以上
  • 共通テスト7割、二次試験5割が目安

戦略:

  • 英語は「最低限クリアすべきライン」として捉える
  • 数学・理科で7〜8割取れる実力があれば、英語は5割でも合格可能
  • ただし英語を完全に捨てると、共通テストで足を引っ張る

この層の受験生へ:
「地方国公立では、英語で大きく差をつけることは難しいですが、『足を引っ張らない程度』にはやっておく必要があります。英語5割を下回ると、合格が一気に遠のきます。」


4-4. 私立理系(早慶理工・東京理科大)

英語がどの程度差を生むか:

  • 極めて大きく差がつく
  • 3科目均等配点のため、英語1科目で1/3の比重
  • 早稲田理工の英語は「日本一難しい」と言われ、ここで崩れると致命的

何割取れば安全か:

  • 早慶理工:60〜70%以上
  • 東京理科大:55〜65%以上
  • 合格最低点は全体で6割前後

戦略:

  • 私立理系志望者は、英語を最優先科目の一つとして扱うべき
  • 数学・理科・英語を均等に対策
  • 早慶理工は特に長文読解力と語彙力が要求される

この層の受験生へ:
「私立理系、特に早慶理工では、英語ができないと話になりません。配点が1/3なので、英語を捨てる選択肢はありません。国公立と異なり、英語の重要度は数学・理科と同等です。」


4-5. 中堅私立理系(MARCH理系・日東駒専理系など)

英語がどの程度差を生むか

  • 中程度に差がつく
  • 数学・理科の難易度が標準的なため、英語で差をつけやすい
  • 英語が得意なら、数学・理科が多少弱くてもカバー可能

何割取れば安全か:

  • 50〜60%以上
  • 英語で6割取れれば、合格可能性が高まる

戦略:

  • 英語は「稼げる科目」として活用
  • 数学・理科が苦手な場合、英語で挽回可能
  • 基礎的な文法・語彙・読解を確実に
  • 英語が苦手なら英語の配点が低い入試方法も視野に

この層の受験生へ:
「中堅私立理系では、英語が得意なら大きなアドバンテージになります。数学・理科で苦戦しても、英語で6〜7割取れれば十分戦えます。」


Ⅴ. 学部系統別の違い

同じ理系でも、学部系統によって英語の重要度は微妙に異なります。

5-1. 工学系(機械・電気・建築など)

  • 英語の重要度:中程度
  • 配点は標準的(20〜25%)
  • 数学・物理の比重が高い
  • 入学後も論文読解で英語は必須だが、入試では数学・理科が中心

到達目安:

  • 最難関:65〜75%
  • 上位国公立:60〜70%
  • 地方国公立:50〜60%

5-2. 情報・数理系

  • 英語の重要度:やや高い
  • 近年、国際的な情報系人材育成の観点から、英語の配点を上げる大学も
  • プログラミング関連の英語文献が多いため、入学後も英語力が重要

到達目安:

  • 最難関:70〜80%
  • 上位国公立:65〜75%
  • 地方国公立:55〜65%

5-3. 理学部(数学・物理・化学など)

  • 英語の重要度:高い
  • 研究者養成の性格が強く、論文執筆・国際学会で英語が必須
  • 入試でも英語の配点が比較的高い傾向

到達目安:

  • 最難関:70〜80%
  • 上位国公立:65〜75%
  • 地方国公立:55〜65%

5-4. 農学・生命科学系

  • 英語の重要度:やや高い
  • 生命科学分野は国際的な研究競争が激しく、英語論文が主流
  • 入試でも英語の比重が比較的高い

到達目安:

  • 最難関:65〜75%
  • 上位国公立:60〜70%
  • 地方国公立:50〜60%

Ⅵ. 英語が"効く受験生/効かない受験生"

6-1. 英語で逆転できるタイプ

以下のような受験生は、英語を武器にできます。

数学・理科が5〜6割で安定している
→ 英語で7〜8割取れば、合計で合格ライン到達

暗記が得意で、語彙・文法を着実に積み上げられる
→ 英語は努力量に比例して伸びやすい

読書習慣があり、長文読解に抵抗がない
→ 理系英語の長文は論理的なので、読解力が活きる

私立理系志望(特に早慶理工)
→ 英語の配点が高いため、ここで稼ぐ戦略が有効


6-2. 英語をやっても伸びにくいケース

逆に、以下のような状況では英語の優先度を下げるべきです。

数学・理科が3〜4割で崩壊している
→ 英語を伸ばしても合格ラインに届かない。まず数学・理科の立て直しが優先

志望校が地方国公立で、数学・理科が得意
→ 英語5割で十分なので、数学・理科で8割取る戦略が効率的

受験まで3ヶ月未満で、英語の基礎がゼロ
→ 短期間で英語を伸ばすのは困難。数学・理科に集中すべき


6-3. 数学・理科とのバランス論

理想的なバランス:

志望校レベル 数学・理科 英語 勉強時間配分
最難関理系 60〜70% 65〜75% 数理6:英語4
上位国公立 60〜70% 60〜70% 数理7:英語3
地方国公立 70〜80% 50〜60% 数理8:英語2
私立理系 60〜70% 60〜70% 数理5:英語5

重要な原則:

  • 数学・理科が5割未満なら、まず数学・理科を優先
  • 数学・理科が6割以上で安定したら、英語に注力
  • 私立理系志望は、最初から英語を重視

Ⅶ. レベル別「どこまでやれば十分か」

ここでは、志望校レベル別に「英語の到達ライン」を具体的に示します。

7-1. 最難関理系(東大・京大・東京科学大)

語彙レベル:

  • 英検準1級レベル(7,000〜8,000語)
  • 学術的な語彙にも対応必要

読解力:

  • 3,000語級の長文を90分で正確に読解
  • 抽象的な科学論文・評論文の論理構造を把握

記述力:

  • 80〜120語の英作文を論理的に構成
  • 要約問題・説明問題に対応

到達目安:

  • 英検:準1級以上
  • 共通テスト:85〜95%
  • 二次試験:65〜75%

やるべき参考書:

  • 単語:『鉄壁』『単語王』
  • 長文:『やっておきたい英語長文1000』『リンガメタリカ』
  • 英作文:『竹岡の英作文が面白いほど書ける本』

7-2. 上位国公立理系(旧帝大・筑波・横国など)

語彙レベル:

  • 英検2級〜準1級レベル(5,000〜7,000語)

読解力:

  • 1,000〜2,000語の長文を標準的なスピードで読解
  • 設問の意図を正確に把握

記述力:

  • 50〜80語の英作文
  • 和訳問題で構文を正確に

到達目安:

  • 英検:2級〜準1級
  • 共通テスト:80〜90%
  • 二次試験:60〜70%

やるべき参考書:

  • 単語:『システム英単語』『ターゲット1900』
  • 長文:『やっておきたい英語長文700』
  • 英作文:『大矢復 英作文講義の実況中継』

7-3. 地方国公立・中堅私立理系

語彙レベル:

  • 英検2級レベル(4,000〜5,000語)

読解力:

  • 500〜1,000語の長文を確実に理解
  • 基本的な文法・構文の知識で対応可能

記述力:

  • 30〜50語の英作文
  • 基本的な和訳問題

到達目安:

  • 英検:2級
  • 共通テスト:70〜80%
  • 二次試験:50〜60%

やるべき参考書:

  • 単語:『システム英単語Basic』
  • 長文:『やっておきたい英語長文500』
  • 英作文:基礎的な英作文問題集

Ⅷ. よくある失敗例

8-1. 英語後回しのリスク

失敗パターン:
「数学・理科を固めてから英語をやろう」
→ 高3の秋になっても英語が5割未満
→ 本番で英語が足を引っ張り、不合格

なぜ失敗するか:

  • 英語は積み上げ型の科目で、短期間では伸びない
  • 語彙・文法の定着には最低6ヶ月〜1年必要
  • 数学・理科が完璧になることはなく、結局英語に手が回らない

対策:

  • 高2のうちから英語の基礎(語彙・文法)を並行して進める
  • 週に最低5〜10時間は英語に充てる
  • 「完璧を目指さず、6割ラインを早めに確保」

8-2. 「英語は共通テストだけ」で二次対策を怠ると危険

失敗パターン:
「国公立理系だから、英語は共通テストだけ対策すればいい」
→ 二次試験で記述・長文が出題され、大失速

なぜ失敗するか:

  • 共通テストと二次試験では求められる力が異なる
  • 共通テスト対策だけでは、記述力・論理的読解力が育たない
  • 二次試験の配点が高い大学では、共通テストだけでは不十分

対策:

  • 志望校の二次試験形式を早めに確認
  • 記述問題がある場合、高3の夏から対策開始
  • 共通テスト対策と並行して、二次対策も進める

8-3. 私立理系で英語を軽視した結果

失敗パターン:
「私立理系も理系だから、数学・理科だけやればいい」
→ 早慶理工で英語が4割しか取れず、不合格

なぜ失敗するか:

  • 私立理系は3科目均等配点(英語1/3)
  • 早慶理工の英語は極めて難易度が高い
  • 英語を軽視すると、数学・理科で挽回不可能

対策:

  • 私立理系志望者は、最初から英語を主要科目として扱う
  • 早慶理工志望なら、英語は東大レベルの対策が必要
  • 国公立併願の場合も、英語の優先度を下げない

Ⅸ. まとめ:理系英語の本質

理系英語の本質を一文で

「理系英語は、合否の主役ではないが、最も落とし穴になりやすい科目。数学・理科で勝負が決まる前に、英語で負けてはいけない。」


理系でも英語を捨てずに向き合おう

1. 志望校の配点と合格最低点を確認する
→ 英語で何割必要かを明確に把握

2. 自分の現在の英語力を測定する
→ 共通テスト模試、英検などで客観的に評価

3. 「到達ライン」との差を確認し、計画を立てる
→ 何をいつまでにやるか、具体的にスケジュール化

4. 英語を完全に後回しにしない
→ 週5〜10時間は英語に充てる習慣をつける

5. 数学・理科が6割を超えたら、英語に本格注力
→ バランスを見ながら、英語を伸ばす時期を見極める


最後に:あなたへのメッセージ

理系受験生の皆さん、そして保護者・指導者の皆さん。

英語は「やらなくてもいい科目」では決してありません。しかし同時に、「英語ばかりやる」ことも間違いです。

大切なのは、自分の志望校と現在の実力を冷静に見つめ、「英語をどこまでやるべきか」を戦略的に判断することです。

この記事を読んだ今、あなたは:

  • 志望校レベル別の英語の重要度を理解した
  • 自分が目指すべき英語の到達ラインを把握した
  • 数学・理科とのバランスを考える視点を得た

あとは、行動するだけです。

英語を武器にするか、足を引っ張る科目にするかは、今日からのあなたの行動次第です。

志望校合格に向けて、戦略的な英語学習を始めましょう。


【参考資料】

  • 旺文社教育情報センター「国公立大2次対策データ」
  • 河合塾・駿台予備校「大学入試分析レポート」
  • 各大学公式発表「入試配点・合格最低点」

 



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