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少子化でもトップ大学の受験が厳しいのはなぜ?「大卒」よりも「大学のレベル」が持つ本当の価値
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少子化でもトップ大学の受験が厳しいのはなぜ?「大卒」よりも「大学のレベル」が持つ本当の価値
「少子化で18歳人口がどんどん減っているから、大学の競争は緩くなって、誰でも入れる『大学全入時代』になった」――。
こうした言説を、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。確かに、数字だけを追えば、その通りに見える側面があるのは事実です。しかし、受験の現実、特に東京大学や早稲田大学、慶應義塾大学といった日本のトップ層に位置する大学の入試を見てみると、その競争は一向に緩くなる気配がありません。むしろ、相変わらず多大な努力と、ときに運までもが必要な、非常に厳しい戦いが繰り広げられています。
なぜ、世間の常識と受験の現実には、これほどまでに大きなギャップがあるのでしょうか。この一見矛盾する現象の深層に迫り、「大卒」という単なる資格そのものよりも、なぜ「大学のレベル」が依然として重要なのか、その多角的な理由を紐解いていきます。
序章:本当に「大学全入時代」は到来したのか?
まずは、「大学全入時代」という言葉の背景にあるデータから見ていきましょう。日本の18歳人口は、2005年の約137万人をピークに減少の一途をたどっています。文部科学省の推計によれば、現在(2023年)は約110万人まで減少し、2035年には初めて100万人を割り、約96万人になると予測されています 。この人口減少が、多くの人が「大学全入時代」を実感する最大の根拠となっています。
しかし、この人口減少にもかかわらず、日本の大学入学者数はほぼ横ばいから微増傾向にあります 。18歳人口に対する大学進学率も、2021年時点で55.5%と伸び続けているのです 。これは、大学の入学定員の総数が大きく減っていないことに加え、大学側が学生確保のために合格者を増やしている結果に他なりません 。
この状況は、従来であれば大学進学を諦めていた層にも門戸が開かれ、高等教育を受ける機会が拡大したというポジティブな側面があることを示しています。
しかし、ここで見過ごしてはならないのが、この「大学全入」が意味するものが「どの大学でも簡単に入れる」ではない、という点です。データが示すのは、あくまで大学の「総数」が確保されている状態に過ぎません。競争の構造を細かく見ていくと、あたかも受験生全体が参加する大きなピラミッドの「底辺」が広がっただけで、その「頂点」は依然として非常に狭い門のままなのです。
第一部:なぜ「トップ大学」の受験は厳しいままなのか?
揺るがないトップ大学の人気と「受験の密度」
18歳人口の減少というマクロな流れに逆行するかのように、トップ大学への人気は全く衰えていません。例えば、早稲田大学の実志願者数は、緩やかながらも増加傾向を示しています。これは、受験生が複数の学部・学科を併願するケースが増えたことにも起因していますが、何よりもトップ大学というブランドに対する絶対的な志向が根強いことを物語っています。
その競争の激しさを象徴するのが「偏差値」という指標です。K塾の入試難易度予想ランキングを見ると、東京大学や慶應義塾大学、早稲田大学といった最難関校は、学部系統によっては偏差値70を超える水準を維持しています。偏差値70という数字は、全国の受験生の中で上位2%しか到達できないという、まさに「絶対的な壁」を意味します。
この事実が示唆するのは、受験という戦いの「質」と「密度」の濃縮です。18歳人口という母集団全体は減っているにもかかわらず、トップ大学を志望する「学力上位層」のパイは、相対的にほとんど縮小していないと考えられます。この限られたパイを、多くの優秀な受験生が奪い合う構造は変わっておらず、むしろ母集団が減った分、その競争はより濃密になっているとさえ言えるでしょう。
偏差値という相対的な指標が、以前と変わらぬ「努力の多寡」を要求し続けているのは、こうした背景があるからです。
第二部:単なる「大卒」を超えた、トップ大学の付加価値
では、なぜ受験生やその保護者は、これほどまでにトップ大学を目指すのでしょうか。それは、単に「大卒」という資格を得るためだけではありません。トップ大学の卒業が持つ、他の大学にはない付加価値を知っているからです。
付加価値その1:就職市場における「学歴フィルター」という名の現実
多くの企業は「人物重視でおこなっており、学歴は関係ない」と公言しています。しかし、その「建前」とは裏腹に、就職市場に「学歴フィルター」が存在することは、もはや公然の秘密となっています。
なぜ、こうしたフィルターが生まれるのでしょうか。それは、人気企業に膨大な数の学生が応募するため、採用の「質」を落とさずに「効率」を上げるための、企業側の合理的な選択肢として機能しているからです。学歴は、企業にとって「継続して努力ができる」「地頭は悪くない」ことの証明であり、採用のミスマッチを避けるための分かりやすい指標として利用されています。
また、この構造は、企業の合理性だけで成り立っているわけではありません。面接官個人の無意識的な心理も影響しています。例えば、自分と同じ高学歴の出身者を高く評価してしまう「類似性バイアス」や、応募者の学歴を知った時点で他の能力も高く評価してしまう「ハロー効果」といった心理的な現象が、このフィルターをさらに強固なものにしています。
つまり、学歴フィルターは、単なる差別的な意図からではなく、企業の採用活動に深く根差した「構造的な仕組み」として存在しているのです。
付加価値その2:キャリアを後押しする「人的ネットワーク」
トップ大学の卒業生が享受する大きな恩恵の一つが、卒業後も続く強力な人的ネットワークです。慶應義塾大学の卒業生は、「OB・OGネットワーク」「就職のしやすさ」「ネームバリュー」の3項目で母校を高く評価しています。これは、卒業大学のネームバリューが、新卒採用だけでなく、その後の転職市場においても影響を与えるという事実が裏付けています。特に、同程度のスキルや実績を持つ応募者が比較される場合、出身大学が評価の決め手の一つになる可能性は否定できません。
このネットワークは、単なる社交の場にとどまりません。キャリアの選択肢を広げ、ビジネス上の機会を生み出す上で、かけがえのない財産となります。
付加価値その3:トップレベルの「教育・研究環境」
トップ大学が提供する価値は、単なる「就職予備校」としての機能だけではありません。その教育・研究環境そのものにも、他大学にはない独自の付加価値があります。
例えば、慶應義塾大学の経済学部には、4年間を英語のみで経済学を学ぶ「PEARL」プログラムがあります。また、京都大学では、グローバルなリーダー育成を目指す「ジョン万プログラム」を設け、学生の海外での専門的な研修や留学を支援しています。さらに、京都市内にいながらにして、アメリカのトップ大学と同等の環境で、英語による講義を受けることができるプログラムも提供されています。
これらの教育プログラムが示すのは、トップ大学の価値が、単なる知識の伝達ではないということです。そこでは、企業が求める「専門的・技術的職業」に就くための土台や、複雑化する社会課題を解決するための思考力、そしてグローバルに活躍するための素養が養われます。慶應義塾の「半学半教」の精神 や、京都大学の「グローバルリーダー育成」への注力は、卒業生を単なる「大卒」ではなく、特定の分野で活躍できるプロフェッショナルとして育て上げようとする大学側の強い意志の表れです。
表:有名大学卒業生と大卒全体の就職先比較(イメージ)
| 就職先カテゴリ |
大卒全体 就職率(%) |
有名大学(早稲田など)の就職者数(上位) |
| 卸売・小売業 | 13.7 | - |
| 医療・福祉系 | 13.6 | - |
| 情報通信業 | 11.6 | NTTデータ、NTTドコモ、日本IBM、富士通 |
| 製造業 | 10.8 | - |
| 専門的・技術的職業 | 41.2 | ベイカレント、アクセンチュア、アビームコンサルティング、野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ |
| 金融・保険業 | - | 三菱UFJ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ銀行、東京海上日動火災保険、SMBC日興証券 |
| 公務員 | - | 東京都職員Ⅰ類、国家公務員一般職 |
第三部:時代が変わっても、「学歴」が持つ重み
「終身雇用崩壊」と「学歴社会」の歪な関係
近年、「終身雇用は崩壊し、個人のスキルが問われる時代になった」と言われることが増えました 。確かに、転職は一般的になり、転職市場ではこれまでの業務実績やスキルが重視される傾向にあります。
しかし、日本の雇用システムは、米国のような完全な「雇用の流動化」には向かっていないという見方もあります。終身雇用は完全に消滅したわけではなく、まだ一定数が保たれているためです。この緩やかな移行期において、転職市場においても大学名は依然として選考に大きく影響するという事実が指摘されています。
この状況は、日本の労働市場が持つ歪な構造を示唆しています。本来、終身雇用の前提が揺らげば、ジョブ型雇用や実績重視が加速するはずです。しかし、実際には「大学名」という、新卒採用の時点での「ポテンシャル評価」の指標が、転職という「実績評価」の場でも重要視され続けているのです。これは、企業が人材の能力を測る上で、学歴という「共通言語」を依然として最も信頼できる指標として利用していることを物語っています。
「学歴階級社会」という冷徹な現実
昨今の日本の学歴事情は、「学歴の重要性は、大学全入時代に弱まるどころか強化された」という分析もあります。そこでは、日本は「学歴階級社会」になりつつあるという厳しい指摘がなされています。
この背景には、学歴がもはや単なる「個人の努力の証明」ではなく、「生まれ」や「家庭環境」といった初期条件に大きく左右される社会構造の一部となっているという現実があります。親が大卒かどうかで、子の学歴にも差が見られるというデータも存在します。もちろん、個人としての「下剋上」ルートは確かに存在しますが、全体としての傾向を覆すことはできません。
この構造の下では、トップ大学への入学は、将来の職業や収入、社会的地位といった様々な機会へのアクセス権を確保するための、極めてリスクが低く、リターンが大きい「投資」と見なすことができます。少子化というマクロな潮流に抗うかのようにトップ大学の競争が続くのは、受験生やその親が、この「投資」の重要性を肌で感じ取っているからに他なりません。つまり、それは単なる「大学選び」ではなく、人生の「階級」を賭けた、高難易度な戦いになってしまっているわけです。
まとめ:大学選びは「就職先」選びから、さらにその先の「人生」選びへ
「大学全入時代」という言葉は、大学進学のハードル全体が下がったことを示しているに過ぎません。しかし、その一方で、「大学のレベル」が持つ意味は、むしろ以前にも増して重要になっています。
トップ大学への受験競争が続く理由は、以下の3つの要素が複合的に作用しているためです。
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効率的な選別装置としての「学歴フィルター」:人気企業が優秀な人材を効率的に確保する上で、最も信頼できる指標が学歴だからです。
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キャリアを加速する「人的ネットワーク」:卒業後も続く強力なOB・OGネットワークと、揺るがないネームバリューがあるからです。
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「機会」のパッケージとしての教育:就職に直結する専門的な教育プログラムや、グローバルなリーダーを育む環境が提供されているからです。
「大学のレベル」は何を意味するでしょうか。それは単なる「卒業証書」ではなく、その先の就職先、そして人生を左右する「機会」と「選択肢」の広がりを意味します。トップ大学を目指す多大な努力は、その価値を理解しているからこそ、極めて合理的な選択といえるでしょう。
(akamon lab) 2025年9月18日 19:13
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