勉強に集中できないとき、つい「自分のやり方が悪い」「意思が弱い」と責めてしまいがちですが、実は知らず知らずのうちに“脳疲労”が進行しているケースも少なくありません。無理に時間を伸ばしても効率は下がる一方。まずは「なぜ疲れてしまうのか」「どんな症状が出るのか」を理解し、賢く対策を立てることが大切です。
勉強で感じる疲れには、大きく分けて次の3タイプがあります。
身体的疲れ
長時間同じ姿勢で座り続けると、血流が滞って肩こりや腰痛を招きます。さらに、ノートや画面を見続けることで目の疲れも生じ、頭痛やめまいに発展することも。
精神的疲れ
難しい問題に行き詰まったり、成績が伸び悩むストレスは、脳に大きな負担をかけます。合格へのプレッシャーや日常の人間関係トラブルも、知らずのうちに“心の疲労”を積み重ねる原因に。
脳そのものの疲労
脳は体重の2%ほどの質量ながら、全体の約20%ものエネルギーを消費するといわれます。長時間の暗記や思考はエネルギー切れを招き、判断力や記憶力を著しく低下させます。
脳に過度な負担がかかると、次のようなサインが現れます。
頭がぼーっとする
思考が散漫になり、テキストを読んでも内容が頭に入らない。肩こりや目の疲れが拍車をかけ、より集中できない状態に陥ります。
集中力が続かない
勉強を始めても、スマホや動画に気を取られやすくなる。つい別のことを始めてしまい、学習時間は長くても効果が薄いまま。
不必要にイライラする
周囲の雑音や小さな不便がストレスに感じられ、勉強の妨げに。いつも以上に息苦しさや不安感を覚えることも。
無気力になる
やる気がわかず、参考書やノートを目の前にしても動けない。いったんサボると、そのまま数時間手がつかなくなる場合も。
なぜ勉強でこんなに疲れてしまうのか。主な原因は以下の3つです。
目の酷使
ノートや参考書、スマホ・PC……。目を酷使しすぎると、脳への情報入力がうまくいかず、無意識にエネルギーを浪費します。
長時間の座りっぱなし
同じ姿勢が続くと血流が悪くなり、酸素や栄養が脳に届きにくくなるため、パフォーマンスがダウン。
慢性的なストレス
テストや合格プレッシャー、家庭や友人関係の悩みなど、多様なストレス要因が自律神経を乱し、疲労感を増幅させます。
――これらが重なると、睡眠不足や栄養不足と相まって脳疲労が深刻化してしまいます。
長時間ダラダラ続けるより、「短期集中+こまめな休憩」 を意識しましょう。東京大学の研究でも、60分連続学習より「15分×3セット+休憩」が学習効果を高めると報告されています。
25分勉強 → 5分休憩(ポモドーロ・テクニック)
45〜60分ごとに10分程度リフレッシュ
「飽き」を感じたらすぐ別作業へ切り替え
このようにメリハリをつければ、同じ時間の勉強でも疲れにくく、知識の定着率もアップします。
疲れを感じたら、次のような方法で脳と体をリセットしてみましょう。
仮眠をとる
15~20分程度の短い仮眠は脳のリセットに最適。午後3時までを目安にとると夜の睡眠に影響しません。
軽い散歩(歩行瞑想)
「歩くこと」に意識を向けるだけで頭がすっきり。周囲の風景や呼吸に集中し、「無心」で歩くのがコツです。
ストレッチ・軽い体操
肩甲骨まわりや腰回りを伸ばし、血流を促進。デスク前でもできる簡単な体操で疲労物質の排出を助けます。
糖分を補給する
チョコレートやバナナなど、手軽にエネルギー補給できるものを少量摂ると、脳の活動を短時間でサポートします。
マインドフルネス呼吸
目を閉じて呼吸に集中。偏桃体(ストレスを司る部分)の過剰活動を沈め、前頭葉のエネルギー消耗を抑えられます。
東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏は、「飽きる」という感情を、脳が特定の領域を使いすぎているサインと捉えています。
第1段階 ── 飽きる
「別のことをしたい」と思ったら、集中時間の上限が近い証拠。
第2段階 ── 眠くなる
脳が「いったん休ませて」と強制終了を試みる段階。ここを無視して続けても効率は下がる一方。
第3段階 ── パフォーマンス低下
ミスや理解力の低下、頭痛・めまい、さらには自律神経失調症状など、深刻な脳疲労サインが出ることも。
「飽きた」と感じたらすぐ行動を変え、「眠くなる」前にリフレッシュするのが賢い戦略です。
疲れの原因 を正しく理解し、身体・精神・脳のバランスを整える
短期集中+こまめな休憩 で集中力を維持
リフレッシュ術 を事前に準備し、疲れをため込まない
「飽きた」はサイン と受け取り、行動を切り替える
脳は使いすぎると、学習効率を自ら低下させようとします。勉強法を見直して、脳疲労を防ぎながら、最短距離で知識を身につけていきましょう。集中できる時間帯や休憩パターンは人それぞれ。ぜひいくつか試して、自分にぴったりのリズムを見つけてくださいね。